❅·̩͙51 ページ11
高校生っぽいことしよーぜ、と
連れられたのはどこぞのショッピングモール。
本来ならテーマパークに行きたいところだったらしいが
時間的にも予算的にも厳しいのでここで、と。
私はカラオケで渡辺の歌をずっと聴いててもよかったんだけどな。
『見たい映画あんだけど、怖い系平気？』
｢あんま得意じゃないけど…でも見たいなら見る｣
『っし、まあ俺いるし大丈夫だろ』
ずんずん歩いてモニターで当日券を買った。
ポップコーンは塩かキャラメルかで少々騒いでしまったが
ハーフアンドハーフで頼んで一件落着。
後ろから3列目の真ん中。
朝の回とあってか客層の違いか、周りは熟年の方が何人か。
若者は私たちぐらいだった。
｢どんな話なの？｣
『んー…なんかマッチングアプリを題材にしたやつ』
｢人の怖さ系か、じゃあ大丈夫かも｣
映画館が暗くなって黒い画面に白い文字だけが浮かび上がる。
せっかくなら楽しもうと、誰かの手が携帯をスクロールして
写真を遡る画面を前のめりになって見ていた。
次の瞬間、
渡辺の手が私を包んだ。
スクリーンにはえらく赤に染った芸術的な料理。
隣を見れば首を振って口パクで無理無理言ってる。
…貴方さっきなんて言ってましたっけ。
俺がいるから大丈夫とかカッコつけてなかった？
芸術的な料理の前に座っているこれまた芸術的な人達が映される。
ちょっと、暴れるな。何歳だよ。
｢…怖いの？｣
顔を寄せて耳に呟いたら、違うと小さな声で返ってきた。
何が違うってんだ。
威勢よく人をぶん殴ってた貴方はどこに行ったの。
『グ ロいのは無理…！』
だそうで、映画が終わるまでずっと私の手は渡辺に掴まれていた。
不気味なシーンや音楽が流れる度に強くなる力に
キュンとしてちょっと握り返してみたり。
本人気づいてなさそうだけどね。
エンドロールが流れて、映画館が明るくなっても
手は解かれなかった。
｢大丈夫？笑｣
『あんなんだと思ってなかったんだけど』
｢なかなか情けなかったよ｣
『…否定できないのがムカつく』
行くぞ、とそのまま立ち上がる。
空いている渡辺の片手が私のジュースを奪って
トレイに乗せた。
当たり前のように手を繋いでるこの距離感も
渡辺の思惑も、私の気持ちもよく分からない。
でも離れたくはなくて、何も言わずに重ねていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 758人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カジャ(プロフ) - りんごさん» ご愛読ありがとうございます。なかなか進みませんね…精一杯の勇気を振り絞ってあれだったようです笑 楽しんでいただけているなら嬉しいです。 (5月2日 20時) (
レス) @page36 id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お疲れ様です！くっつかへんのか〜ぃの前に、ハグだけか〜ぃ！って海のとこで叫びましたꉂ🤣ワクワクしながら待ってマス！ (5月2日 20時) (レス) @page41 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - すれ違ったふたりが戻ってきて安心しましたーヽ(；▽；)ノ空気感、好きです♡ (4月29日 22時) (レス) @page36 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りんごさん» 大変申し訳ありません、ご指摘感謝致します。 (4月12日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - カジャ様、ワクワクしながら拝見してます⋆♡もしかしてですが、45と48が抜けております。 (4月12日 13時) (レス) id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カジャ
| 作成日時：2024年4月11日 19時
