❅·̩͙71 ページ31
予想通り、半額を少し越える値段で
あの紫は手元を離れた。
盗んできたのかと冗談まじりに聞く店主に
バカ真面目に母の遺産だと言って出てきた。
カフェで紅茶を飲んで
映画館でテキトーに時間の合う映画を見て
ドライブがてら海へ進む。
気づいたら全部、渡辺と過ごしたあの一日を辿っていた。
本当は行く予定だった海。
夕日に照らされて悲しいくらいに綺麗だ。
あったものがなくなる辛さはあの時に味わい尽くしたはずだった。
永遠に流れていた涙もあの時に枯れたと思っていた。
まだこの胸は、痛みを感じられる場所が残っていたらしい。
カバンに入ったこれを置いたら彼らの元を離れるつもりだった。
幸せな道とは言わなくとも
お互い平凡でそれなりな人生を送るために。
ひとしきり零れた涙を拭って、せめて礼は言おうと
海風に当たった車に乗って帰路につく。
･
･
･
帰った瞬間からそれは目に入り、耳に届いた。
傷だらけの渡辺が、真っ白なふっかに胸を掴まれている。
渡辺の後ろにはこれまた傷だらけのだてが。
ふっかの後ろには、険しい顔をした岩本が。
佐｢Aちゃん、｣
特徴的な佐久間の声が私を呼んだ瞬間、全員がこちらを見た。
｢…何してるの｣
『こっちのセリフなんだけど』
掴まれているふっかの腕を払った渡辺が
私が置いたものを持って近づいてくる。
シャラ、と揺れた雪だるま。
『これ置いてったのそういうことじゃん』
『俺がいるから、もう白雪には居られないんだろ？』
光が1ミリも入っていない。
底なしの闇が私を覗き込んでいた。
何のことか分かっていないメンバーは視線で彼に問いかける。
分かっているだては、まっすぐに私を見て
きっと点と点が繋がった目黒は目を見開いて渡辺を見ていた。
深｢どういうことだよ、なんでお前のせいになんだよ｣
私は、私のしたいことを。
闇から目を逸らしてカバンを開けた。
3つの札束を取り出して渡辺の前へ。
｢はい。これであなたは自由｣
『………は』
｢白雪を出ていく。でもそれはあなたのせいじゃない。
私が居たら、あなたが辛いだろうから｣
『なんで……そんなわけねぇじゃん…そっちの方が、
ずっとずっとずっとしんどかったはずだろ！？
俺のことぶん殴れよ、罵ってぶつけろよ！！
俺はお前に殺されたっておかしくねぇのに…！
なんでなんも言わねぇんだよ…っ』
泣いている。
小さくて、どうしようもできなかった渡辺が。
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カジャ(プロフ) - りんごさん» ご愛読ありがとうございます。なかなか進みませんね…精一杯の勇気を振り絞ってあれだったようです笑 楽しんでいただけているなら嬉しいです。 (5月2日 20時) (
レス) @page36 id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お疲れ様です！くっつかへんのか〜ぃの前に、ハグだけか〜ぃ！って海のとこで叫びましたꉂ🤣ワクワクしながら待ってマス！ (5月2日 20時) (レス) @page41 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - すれ違ったふたりが戻ってきて安心しましたーヽ(；▽；)ノ空気感、好きです♡ (4月29日 22時) (レス) @page36 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りんごさん» 大変申し訳ありません、ご指摘感謝致します。 (4月12日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - カジャ様、ワクワクしながら拝見してます⋆♡もしかしてですが、45と48が抜けております。 (4月12日 13時) (レス) id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年4月11日 19時
